【明晰夢】耳と指を切り取られる夢

   2017/05/19

冬山に入っている時、ひどい吹雪のため動けなくなってしまった。テントの中で寒さに震えているうち、ボソボソという話し声が聞こえてきた。ついに幻聴まで聞こえ出したかと思ったらしい。段々はっきりと聞こえるようになる。

と、いきなり入口が開かれて黒い影が何体も忍び込んできた。驚いている彼を取り囲んだ影は、ぼんやりとした人型に見えた。彼を見下ろして何やらブツブツと密談しているかのよう。

そのうち、影の一体が彼の傍に身を屈め、ぐっと耳を掴んだ。慌てて振り払おうとしたが、硬直した身体はピクリとも動けなかった。耳を掴まれているのはわかるが、顔も動かせないので状況が見えない。直後、耳元でゾリゾリという音が聞こえ、骨が嫌な振動を伝えてくる。痛みはまったくないが、硬く冷たい物が、耳と顔の間に滑り込んでくる。

・・・俺の耳を、ナイフか何かで切り落としている!?

あまりのことに頭の中が真っ白になったという。気がつくと、身体の他の場所でもゴリゴリと重く響く振動が感じられた。手そして足の指が削られているような、そんな感触があった。やがて影は一体一体ゆっくりとテントから外へ出ていく。

最後の一体が雪の中へ消える寸前、何とか目を動かしてそいつを見た。輪郭がぼんやりしているのは相変わらずだが、指先あたりに白い物がぶら下がっている。恐らくは、彼の耳と指。

それを見て理性が切れた。「うわわわわっっぅぅ!」と悲鳴を上げて飛び起きる。叫んだせいか、金縛りは解けていた。慌てて身体を確認したが、どこも欠けている箇所はない。耳も指も、しっかり満足なままだ。はっとテントの入口を見る。ファスナーは確りと閉めてあり、何かが入ってきたような痕跡もなかった。嫌な夢を見た。そう思い、残り少ない非常食を口にしてから寝た。味などまったくわからなかった。

二日後、食料が切れることもなく無事に彼は下山した。しかし代償としてか、片耳と手足の指を一本ずつ、凍傷で失ったのだという。・・・本当に嫌な夢だったよ。そう彼はぼやいていた。

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