十二単の女性が歩く『姫の池』の話

   2017/05/13

今は決壊して無くなってしまった沼の話で、20年も前の事です。うちの地域ではドジョウを食べる文化がありました。今もあるんですが、健康にいいとかなんとか…

じいさんとよく「姫の池」と呼ばれるただの沼なんですが、そこに釣りに行ってました。姫の池と呼ばれる所以は、
お昼12時過ぎにそこへ行くと、江戸時代の十二単の女性が沼を歩いてるとか、夏の夜中2時半にそこへ行くと、人型にホタルが集まるとか、色々な噂が絶えない場所です。

誰も近づかず、よそ者のじいさんと私は毎日のように大漁を喜んでいました。ドジョウはそんなに美味しいものではありませんが、ばあさんが喜ぶのでたくさん釣って帰ってました。

ある日、岩雪崩が起きるほどの大雨が降って姫の池は決壊し、舗装された山道のわきの側溝に、色んな魚が流れこむ事件が起きました。地元の魚屋さんがドロを吐かせれば大儲けできると考え、溢れだした魚をかき集めて店で売りました。とても大きなヌシだと思われるドジョウだけが売れ残り、魚屋さんが食べてしまいました。三日三晩の高熱と共に息を引き取ったそうです。

それと関係あるのかはわかりませんが…。大雨の次の日にじいさんと私は姫の池に釣りに行きました。道中、地味な着物を着た女性に会いました。何か探しものをしているようだったので声をかけました。
「おばちゃんどうしたん?なんか探してるん?」
少し驚いた顔をされながら返答が来ました。
「池がわやになってしもうて──」
おばさんが話しかけた途端に、後ろから何かに掴まれてものすごいスピードで私がバックしていきました。私を引っ張ったのはじいさんでした。
「何見た?わしにはなんも見えとらん!何と喋っとった!?」
「おばちゃんがおって、池がめちゃくちゃになってて何か探してたで」
おばさんは追いかけてきませんでした。悲しそうな顔をして私を眺めているだけでした。

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