特殊能力が遺伝したある親子の話

   2017/05/11

いつものように山登りの準備万端ととのえた夜、彼が地図を眺め明日のルートをおさらいしていると、玄関で物音がした。そっとドアを開けて覗くと、寝ていたはずの妻がごそごそ何かしている。
彼「な、なにしてんの?・・・」
妻「ん・・・なんとなく。入れといた方がいいかな~って思って・・・」
寝ぼけ眼の妻が、ザックに包帯やらガーゼやら詰めていた。一体いくつ入れたのか、ザックはぼこぼこに変形し膨れ上がっている。これが必要な事態って、いったいどんな状況なんだ?ぞっとした彼は、その登山を取り止めたそうだ。

彼女曰く、勘の働く時は常に「なんとなく」なんだという。漠然と、こうした方がいいかなぁと思うだけなんだそうだ。残念ながら、子供を産んだ後、その能力は徐々に弱くなったそうで、今ではほとんど、その力が働くことはないという。

しかし最近、彼女は不思議な体験をした。彼女はひどい機械音痴で携帯も苦手なので、主婦になってからは家に置きっぱなしだったそうだ。その日も家においたままスーパーに向かった。ベビーカーを押しながら買い物していると、携帯が鳴りだした。

置いてきたはずなのに、と不思議に思った。見ると、赤ん坊がよだれだらけの手で携帯を握りしめていたそうだ。出ると、相手は市内の病院の看護婦であると名乗り、彼が交通事故にあい手術が必要になるので、至急病院へ来て欲しい、と言った。動転した彼女は大慌てで病院に駆け付けた。

幸い、命に別状はなく足の骨折だけであり、手術も無事に終わった。手術室から出てきて照れくさそうに笑った彼を見て、彼女は思わず泣いてしまったという。

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