電波の届かない山で、時々奇妙なラジオ放送が聞けることがある

 

山で仕事をする人の中には、熊や猟師の誤射から身を守る為に、ラジオを身につけて山に入る人が少なからずいる。Aさんもそんな一人で、仕事中もラジオを鳴らしっぱなしにしている。中には電波の届かない仕事場もあるのだが、そんな時でも、ラジオのスイッチは入れっぱなしにしておく。そうしておくと時々奇妙な音が聴けるから、なのだそうだ。

古い歌謡曲、トラック無線、空電に埋もれた外国語の群れ…ある時など、玉音放送がラジオから流れてきた事もあるらしい。
「山に迷い込んだ電波を、何かのはずみで拾っちまうんだろう」
Aさんは、冗談とも本気ともつかぬ口調でそう呟いて茶を飲んだ。

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