自殺者が撮影した風呂場の写真

 

1992年頃、一瞬だけ住んだ京都のアパートの話です。当時学生だった私は、ちょっと無理をして風呂とトイレのついた部屋に引っ越しました。友達に「女を連れ込むなら風呂トイレ共同はヤバイでー」みたいに言われたからです。

引っ越してきた最初の日、風呂で髪を洗っている最中にふと鏡に目をやると、そこに女が映っていました。僕の背後で中腰になって、鏡越しに僕の顔をジッと見ています。金縛りにあったみたいに振り向くことも叫ぶことも出来ませんでしたが、それでも手を後ろにやってみると女の服に触れました。

どうやら実体があるようですが、それでも怖いことには変わりありません。やがて女は立ち上がって、ドアを開けて風呂場から出ていきました。風呂を出てから玄関のドアを調べましたが、鍵が掛かっています。ただ、窓の鍵は開いていました。部屋の中も調べたのですが、人が隠れるような場所などどこにもありません。その日は、触った時の感触や、出ていく時の仕草なんかが人間っぽかったし、窓から誰かが入ってきたのかな?と思いました。

次の日、風呂に入る前にドアや窓に施錠したにもかかわらず、また女が現れました。昨日と同じように、しばらくこっちを見つめた後、ドアを開けて出ていきます。その間、僕はやっぱり身動き出来ませんでした。慌てて風呂場から出て、戸締まりを確認したのですが、ドアも窓も鍵は掛かったままです。

もうガクブルだったので、すぐさま大家に電話しました。大家は僕の話を聞いて、『そんな話は聞いたこともないが……』と言いつつも『その部屋の前の住民が自殺してるんや』と続けました。

ここへ引っ越して3ヶ月くらい経って、校舎の屋上から飛び降りたのだそうです。そこまで聞いてひょっとして……と思ったのですが、その住民は男だということでした。気持ちが悪いので部屋を出たいと申し出ると、1ヶ月以内なら敷金は全額返すということだったので、速攻で部屋を探して、1週間後には部屋を出ることにしました。

その間、部屋の風呂には入らなかったせいか、女の姿は一度も見ませんでした。引っ越しも決まって、荷物の整理をしていると、(と言っても、大半は段ボール箱に入ったままでしたが)押入の下段に、背の低い箪笥があるのに初めて気が付きました。その箪笥と押入の天井の隙間から、写真屋の袋が出てきました。

中には写真が25枚とお札が1枚。写真は全て風呂場の鏡を写したものでした。カメラを構えた男以外に人は写っていません。ただ、途中から背後のドアが開いています。それだけの写真だったのですが、急に背筋が寒くなりました。

もし、写真を撮った人物が自殺した前の住民だとすると、なぜそんな写真を撮ったのか?彼が撮ろうとしていたモノは何だったのか?そんなことを考えるうちに居ても立ってもいられなくなって、その写真を元に戻すと大慌てで部屋を出ました。以降、オカルトな体験は一度もしていません……

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